改訂版発行にあたり

 

 初版、続版、続々版と発行を重ね早や第一〇版目の発行となりました。「あな

たは賢者愚者の言葉を頻繁に使っているが、あなた自身は?」と、よく聞かれる

ことがあります。正直にいって私は愚者ではないと少々自惚れています。しかし、

私にも馬鹿な時代があったればこそ、このような本を出すことができたのです。

賢者より己は未熟であり「哲学は己の愚かさを発見する」ことは確かなことです。

 若い人たちが正しく生きていく為、何かの糧にでもなればと、私の生きざまを

寸言集〈本を書くことは恥をかくこと〉と知りつつ書き下ろしました。意外なこ

とに若い人達より私と同世代や先輩達から「よくまとめている」「始めなく終わ

りもないのでどの頁をひらいても〈人生なるほど集〉である」と、ご感想をいた

だき感激いたしております。

 でも、若い人たちから「言語明瞭、意味不明瞭」で理解できないとのご批判を

うけることを覚悟はしていたものの、曲解されることをもっとも恐れていました。

 例えば、「借金する者はよく嘘を云う!借金があっても嘘を言わない人は何れ

その借金を戻す人」とあるのを読み、〈借金をするものははすべて嘘を言う〉と

誤解されましたので、今回は「借金をするために嘘をいう人がいる。嘘をいわな

い人は己の借金を何れ無くす人!」と改めました。

 この体験集は、私自身であって必ずしも私の体験が正しく善いとは思いません

が「体験は何びとも否定できず」であって、この裏には悪が潜んでいるとを否定

はいたしません。

 ただ今は「体験を活字にして己に対しての戒めである」と感じ入る心境の昨今

であります。

 平成一〇年十一月十五日

                                  著 者


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