発刊のことば
父は香川県三豊郡、河野一族の與三郎、母は同郡、岩倉一族のスガの三男と
して生まれる。兄弟姉妹十人の大家族で、私が四才のとき父の急逝により口減
らしのため長姉の婚家先にひきらられ熊本に移住。その長姉も家族十人の大家
族のさ中に夫が急逝し、その家計を援助すべく中学は夜間部に通い、早稲田講
義録の通信教育をもうけました。
友達が有名校の制服を来て登校するのを見て、己がみじめになったことを今
でもはっきり思いだします。
だが、その境遇の中で学歴がないのは己一人だけではない。〈学歴は学力で
おぎなうことだ!。品性の完成こそが大切だ!〉と道徳科学の廣池千九郎先生
のお話を聞き、また商人道については商業界の倉本長治先生、商人のド根性は
水野鐵造先生、会計学と流通経済学は斎藤榮三郎先生、政治のありかたについ
ては細川隆元先生など、超一流の大先生から直接の御指導うけたことは、誰よ
りも幸せであると感謝しております。
私はかねてから満五十五才になったら人生に一節をつけ、第二の人生は社会
奉仕に専念することを何より念願いたしておりました。満五十五才の誕生日を
迎えるにあたり、一生懸命に努力してきた私の生きざまの体験を寸評寸言集に
して、子供や子孫そして後輩のため何かの糧になればと出版した次第です。
昭和五十七年八月十八日